インナーソース入門

企業におけるコラボレーションと生産性を高める秘訣

原題: Getting Started with InnerSource 著者: Andy Oram 発行日: 2015年7月 発行元: O’Reilly Media 翻訳: InnerSource Commons Japan

まえがき

インナーソースの世界へようこそ。インナーソースは、閉じた組織におけるオープンソースソフトウェアを開発するための原動力であり、プロジェクトの "オープン性" を企業内のチームを超えて広げるものです。この本では、オライリーの編集者兼著者である Andy Oram が、オープンソース開発を成功させる原則を確認するとともに、大手 EC の PayPal でインナーソースがどのように機能したのかを説明することによって、皆様をインナーソースの世界に導きます。

PayPal がインナーソースを採用するまでの過程には企業としての意思決定の積み重ねがあり、その中にはツールと文化の意識的な刷新が含まれています。 インナーソースを通じて、同社はより迅速な開発とより良い品質を達成するだけでなく、プログラマが PayPal のどの開発プロジェクトにも貢献することを奨励し、チーム間の共創を可能にしました。

この本を通して読者の皆様は、以下のようなインナーソース戦略の具体的なメリットを学ぶことができます。

  • より高速な開発: プログラマーは、ユニットテスト、コードカバレッジ、および継続的インテグレーションを使用して、初期の段階でバグを取り除くことができます。

  • 完全なドキュメント化: コードを説明するドキュメントの質が向上します。コードに併記される公式なコメントの質が上がることと、チャット・チケット・メーリングリストでの議論で公式的な説明を控えることの両方を含みます。

  • コードの再利用: 組織全体のプログラマーが、他のチームが開発したモジュールのコードとアーキテクチャを理解することができます。

  • チーム横断的なコラボレーション: チーム外からの貢献には摩擦がなくなり、書き直されることがほとんどなくなります。

  • GitHub を使った開発: GitHub では、社内用のプライベートリポジトリだけでなく、OSS 用のパブリックリポジトリも合わせて扱うことができます。

この書籍は無償であり、クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(CC BY)で提供されています。 原本 (PDF形式3.3 MB)も同じく CC BY ライセンスで提供されており、誰でもダウンロードすることができます。

著者より日本語版に寄せて

著者として日本語版の発刊を嬉しく思います。 O’Reilly Media から英語版の本書が世に出たのは 2015年7月のことで、同社のレポートの中でもトップクラスの人気が何年も続きました。 本書の日本語版が提供されたことで、日本でもソフトウェア開発方法を変革することはもちろん、コミュニケーションが根本から強化され、社内のどこにでも高品質な貢献をできるオープンな体質の実現が容易になりました。 日本の多くの大企業が本書で語られている協働的なプログラミングの恩恵を受けられるのではないか、と私は期待しています。 協働と個人の尊重を理念とした企業文化とは、様々なチームの人材と才能を合わせ、他のチームと共にソフトウェア開発を乗り越えてゆくことから生まれるのです。 インナーソースという働き方を学ぶことは、開発者も企業もオープンソースソフトウェアの価値を理解するのに役立ちます。 この理解こそがインナーソースの推進者が常に目指してきた核となる目標なのです。

As the author of Getting Started with InnerSource, I’m very happy to see a Japanese translation. O’Reilly Media released Getting Started with InnerSource in English in July 2015, and for several years it held top spot among our reports in attracting readers. Now it can play a role in Japan, not only to transform software practices, but to put communications on a firmer ground and open up organizations to high-quality contributions from all over the company. I think that a lot of large companies in Japan would benefit from instituting the type of collaborative programming described in the report. A business culture so oriented toward collaboration and personal respect can thrive by bringing talent from each team to improve the software managed by other teams. Learning the InnerSource way of working also helps programmers and companies appreciate the value of open source software, which has always been a key goal of the promoters of InnerSource.

Andy Oram, author and editor, https://www.praxagora.com/

License

本書は O'Reilly Media, Inc. より正式に翻訳許可を受け、CC-BY-NC-SA 4.0 のライセンスのもと公開されています。

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